読書感想文

外山滋比古著『思考の整理学』

思考の整理学 (ちくま文庫)

外山滋比古 著・1986/04/24発行
読了:2023/12/11(本棚)

アイディアが軽やかに離陸し、思考がのびのびと大空を駆けるには? 自らの体験に即し、独自の思考のエッセンスを明快に開陳する、恰好の入門書。考えることの楽しさを満喫させてくれる一冊。

感想

10年くらい前にお薦めいただいた覚えがある本をやっと買ったので読了。今更私なぞがお勧めする必要がないほど本屋に並んでいる名著だし読み終わった数か月後というタイミングで新版が出た。

新版 思考の整理学 (ちくま文庫)

いわゆるノウハウ本ではないけれど日々の思考から何か(主に論文)を作り出すまでの考え方の話なので、二次創作をするオタクにもがっつり適用された。同人誌は自説を展開する論文みたいなものだもんね(※諸説あり)細かな手順が書かれているわけではないけど参考になりそうな話が多かったので、創作の手が止まった時にぼんやりと読むのに良さそう。

テーマはひとつでは多すぎる(ひとつのことしか見えなくなってしまう)。見つめるナベは煮えない、ネタは酵素を加えて発酵させ、適度に寝かせておく。知識や情報を頭に詰め込むだけではなく忘れて削ぎ落とすことも必要。とにかく書いてみる。書いてみてから手を入れる。

直前にChatGPTについての本を読んでたので、機械的活動と人間的活動を区別する結論がコンピュータ黎明期の40年前とAIが活躍する現在とでほとんど変わらないのも面白かった。創造性だけは機械的活動だけでは生まれない。

膨大な情報を記憶することと、それを元にして指示どおりに計算することは人間よりも機械の方が得意である。だからこそ、その人だけの目的(個性)の中で集めたりまとめたりした情報を元にして考えること、つまり思考を、それだけに没頭せず他のこと=人間としての生活をしながら整理することで生じるものが人間的(創造性)である、ということなのかなぁ。

機械も人間も無から何かを作り出すことは難しいけど、少なくとも機械には「思いついたネタを寝かせておいたら全く別の方向から刺激が入ってきて別のネタと組み合わさって、なんか全然違うネタが閃いた」というのはまだなさそう。その閃きを発生させるために様々な発想術が模索されているし、そのためにさまざまなデジタルツールが活用されているけれど、そこから選んで取り出すのは人間の個性、というか、少なくとも営利目的ではない創作においては個人の趣味に寄る。

つまりAIは万人が楽しめるような小説が書けても私好みの小説はまだ書けないので、結局思いついたネタを混ぜたり発酵させたりしながら自分で書くしかない。書くしかないかぁ。